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汝、星のごとく」と 北鎌倉浄智寺のシャガ :20230513 [読んだ本]

休みの日に時間がある時、

本と音楽と連れて、カメラを持って鎌倉の散歩に出かけています。

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横須賀線の対面式の座席に座れば、

ちょっとしたプチ旅行気分。車窓の景色も段々と変わっていって、通勤の電車とは違って非日常への誘い。 ?


時々本に夢中になっていて乗り過ごしてしまいそうなこととかもあるのですが、

この日は途中で先を読めなくなってしまいました。


櫂君、あんな無茶な飲み方をしていて(ウイスキーをそのままがぶ飲みとか)心配だったのですが、

やっぱり胃がんになってしまって・・・。

先のことが心配で「汝、星のごとく」、途中で本を閉じてしまいました。

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気が付けば北鎌倉駅。

まだ朝の8時前。

一緒に降りたのは高校生たちくらい。駅の周りには誰もいません。

曇りがちの静かな北鎌倉。

日差しが欲しいですが、これはこれでしっとりと落ち着いた感じで良いかも。[わーい(嬉しい顔)]


鎌倉で初めて出会った花が多いのですが(ここで花の名前を覚えたものも)、

初夏に咲くシャガもその一つです。桜が終わるころ咲き始めてくれます。

北鎌倉では東慶寺さんと浄智寺さんがとても綺麗。

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残念ながら東慶寺さんは、最近、写真撮影は禁止になってしまったので、

ここのところシャガに会いに来るのは浄智寺さん。

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この日も訪れてみれば、

山門の両側がぼうっと曇り空の下で、光っているかの様。

シャガの群生がとても綺麗でした。


日差しがあればもっと綺麗なのでしょうけれど・・・、

今年もシャガたちに会うことができたので「良し」とします ww ?

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まわりからは鳥たちの囀りの声が聴こえてきます。

そっとイヤホンを外して北鎌倉の朝の音達を楽しんでいると、

コジュケイのご夫婦が朝食の時間?

邪魔をしないように w

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北鎌倉の散歩、シャガとコジュケイと静かな曇り空 [黒ハート]

素敵な時間を過ごさせてもらえました。[黒ハート]


帰って来て、先を読むのが怖かったけれど、

ビールを頂きながら(力を借りながら?)、

「汝、星のごとく」一気に読んでしまいました。

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生きる中で、分岐点が幾つかあるのだと思います。

ゲームなら、分岐点を左にと? やり直すことができますが、現実の世界の分岐点はできなくて・・・。

道を選ぶのは、じぶん(経験による判断力とも言う)に頼るしかなく、

年を重ね振り返ってみると、それは違っていたと思うのかもしれないけれど(後悔とも言う)、

その時のレベル、HPとMPの状態とかでは、それが最良だったのかもしれないし。

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高校生の時に出会い、

お互いの境遇にも似通っていたこともあり次第に惹かれ愛し合うようになった楷と暁海。

卒業後の遠距離恋愛にもかかわらず愛を育んでいきますが、ても、


東京と四国の島、売れっ子漫画家と旧態然とした女性蔑視の会社に勤め、精神状態の良くはない母親と暮らす境遇は、次第に同じ天秤の上ではなく…。片方に傾いてしまって。

20代に別れ。

そして、30代になって・・・再び。そんな櫂と暁海。

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人の分岐点…について、そんなことを強く思った一冊でした、「汝、星のごとく」。

同じ時期に読んだ春樹さんの文章に、脳内メモリは全て奪われてしまい、

最初はこの本を読んでいてもそれほどの震え(感動する本に出合うと背骨がぶるっと震えます)はなかったのですが。


春樹さんの呪縛が薄れ、靄が取れ始めて、

こころの中に櫂と暁海の物語が少しずつ浸みわたっていきました。


本屋大賞の一冊、櫂と暁海の物語。

この日に会ったシャガの花の記憶と一緒に、心の抽斗に仕舞っておきたいと思います。[わーい(嬉しい顔)]

" Nannji,Hoshino Gotoku & Iris japonica Jyochiji "
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村上春樹さん新刊_街とその不確かな壁:20230422 [読んだ本]

来ましたぁ~!!

Amazon で予約しておいたので発売日に届いて、

すぐに読み始めです。 春樹さんの新作長編小説「街とその不確かな壁」!!

※注 これから読む予定のある方は、ネタバレもあると思うので・・・ ^^;  お気を付けください。

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16歳で究極の恋愛。

こころが自分と言うもの全体が、求める相手と出会った主人公です(入れ込み細工の箱も、中に入るものもまだまだ大きい)。

文通、少ないデートを重ねますが、手紙もある時に途絶えてしまい・・・。

いつか帰って来るのでは会えるのではと・・・待って、待ち続けて・・・中年の年に。


気が付くと、

少年だった頃、いなくなってしまった少女と一緒に想像した、不確かな壁のある「その街」の本のない図書館の「夢読み」になっています。

その図書館で主人公の世話をするのは、そう、あの少女。

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でも、それは、「本当」の彼女であって、じぶんがこちら側の世界で愛した彼女はその「影」。

少女はあの時のまま年も取っておらず、また、主人公のことも知らない。

不確かな壁の街は、「頭に皿をのせている時は、空を見上げない方がいい」街(P76)。

そして、あの心の触れ合いは戻らない・・・。

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春樹さんの3作目で、まだ書籍になっていなかった同名の小説。

それを40年経った今、描き切れなかったものを描き切った本作は、

30代に書いたもう一つの双子の様な作品「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」と

並立し補完しあう作品(春樹さんが後書きで述べています)。


たた、ワンダーランドが “とんがった” エンタメ性のある作品であるのに対して、本作はより精神的な、

ある意味スピリチュアル性が強いなぁと感じた作品。

派手さはなくたんたんと、冬の景色がよく似あう作品だなぁと(壁の街も冬と雪です)。

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ハードボイルド・ワンダーランドの様に、あちら側とこちら側と、行き来をするような形でお話は進んでいきます。

既に亡くなっているけれど、主人公と一部の人には会いに来る元館長の子易さんと、イエローサブマリンの少年の様なトリックスター的な存在。

春樹さんの作品には欠かすことのできない「穴」。

そして、何よりも春樹さんの文章。

リズムがあって、メタファーも散りばめられて、やはり、読んでいて心地よいです。

久しぶりの心地よい文章、久しぶりの春樹さんワールドにとっぷりと浸かってしまいました。

読んでいる時、それは至福の時。


こちら側からは消えてしまった少女。ずっと待ち続けていた主人公。

このままなのかなぁと・・・心配になりました・・・。

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P585
「それにだいたい、わたしはこれまで一体何を待ってきたというのだ?

自分が何かを待っているのか? それを正確に把握できていただろうか?

自分が何を待っているのか、それが明らかになるのをただ辛抱強く待っていた。というだけのことではなかったか? ・・・・・・(略)、

その箱の中に入ったもっと小さな箱。際限なく精妙に連なっていく入れ子細工。

箱はどんどん小さくなっていく・・・そして、またその中心に収められているはずのものも。

それが、まさに私がこれまでの40数年、送ってきた人生の実相ではないのだろうか。」


そんな主人公、

長年勤めた出版関係の仕事を辞めて、福島のとある山間の町営図書館長となった主人公。

コーヒーショップの女性。性的なことは苦手としますが、でも、その姿と心に惹かれる女性と出会います。

「それが明らかになるのをただ辛抱強く待っていた」。

コーヒーショップの女性との出会い、それは辛抱強く待っていたものなのでは・・・。

入れ込み細工の箱も、中に入るものも、16歳の時とはずいぶんと小さくはなっているのでしょうけれど。

たぶんです。

そう思うと、じーーん。

良かったな。本作には救いがあります。

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「でも急がないでね。わたしの心と身体はいくらか離れているの。少しだけ違うところにある。

だからあとしばらく待ってほしいの。準備が整うまで。わかる? いろんなことに時間がかかるの」

辛抱強く待っていたものに出会った主人公です。きっと・・・。

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人は、何を待っているのか分からないままま、辛抱強くずっとずっと待っているものかもしれない。でも、いつか待っているものに出会えて・・・。

年を取ればとるほど入れ込み細工の箱は小さくなるけれど、待っている中身も小さくはなっていくけれど・・・、

その中身は変わらず貴重なもの。


久しぶりの春樹さん、全661頁、最近には珍しく4日で読み終えました。

騎士団長殺しから6年。次の作品はもっと早く出してほしいです。

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老眼もだいぶ進み ^^; 本を読むのもつらくなってきていましたが、

春樹さんの文章は別格です。

ビールを頂きながら、

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ビルスマのバッハの無伴奏チェロ組曲を聴きながら ♪

久しぶりに充実した読書時間でした。 


「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」とボンジョビ、

「美丘」とレミオロメン、etc etc ・・・の様に。

これからは、無伴奏を聴くときっと、この本のことを思い出すと思います。

" 2023/04/22 The City and Its Uncertain Wall "
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