村上春樹さん新刊_街とその不確かな壁:20230422 [読んだ本]
来ましたぁ~!!
Amazon で予約しておいたので発売日に届いて、
すぐに読み始めです。 春樹さんの新作長編小説「街とその不確かな壁」!!
※注 これから読む予定のある方は、ネタバレもあると思うので・・・ ^^; お気を付けください。
16歳で究極の恋愛。
こころが自分と言うもの全体が、求める相手と出会った主人公です(入れ込み細工の箱も、中に入るものもまだまだ大きい)。
文通、少ないデートを重ねますが、手紙もある時に途絶えてしまい・・・。
いつか帰って来るのでは会えるのではと・・・待って、待ち続けて・・・中年の年に。
気が付くと、
少年だった頃、いなくなってしまった少女と一緒に想像した、不確かな壁のある「その街」の本のない図書館の「夢読み」になっています。
その図書館で主人公の世話をするのは、そう、あの少女。
でも、それは、「本当」の彼女であって、じぶんがこちら側の世界で愛した彼女はその「影」。
少女はあの時のまま年も取っておらず、また、主人公のことも知らない。
不確かな壁の街は、「頭に皿をのせている時は、空を見上げない方がいい」街(P76)。
そして、あの心の触れ合いは戻らない・・・。
春樹さんの3作目で、まだ書籍になっていなかった同名の小説。
それを40年経った今、描き切れなかったものを描き切った本作は、
30代に書いたもう一つの双子の様な作品「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」と
並立し補完しあう作品(春樹さんが後書きで述べています)。
たた、ワンダーランドが “とんがった” エンタメ性のある作品であるのに対して、本作はより精神的な、
ある意味スピリチュアル性が強いなぁと感じた作品。
派手さはなくたんたんと、冬の景色がよく似あう作品だなぁと(壁の街も冬と雪です)。
ハードボイルド・ワンダーランドの様に、あちら側とこちら側と、行き来をするような形でお話は進んでいきます。
既に亡くなっているけれど、主人公と一部の人には会いに来る元館長の子易さんと、イエローサブマリンの少年の様なトリックスター的な存在。
春樹さんの作品には欠かすことのできない「穴」。
そして、何よりも春樹さんの文章。
リズムがあって、メタファーも散りばめられて、やはり、読んでいて心地よいです。
久しぶりの心地よい文章、久しぶりの春樹さんワールドにとっぷりと浸かってしまいました。
読んでいる時、それは至福の時。
こちら側からは消えてしまった少女。ずっと待ち続けていた主人公。
このままなのかなぁと・・・心配になりました・・・。
P585
「それにだいたい、わたしはこれまで一体何を待ってきたというのだ?
自分が何かを待っているのか? それを正確に把握できていただろうか?
自分が何を待っているのか、それが明らかになるのをただ辛抱強く待っていた。というだけのことではなかったか? ・・・・・・(略)、
その箱の中に入ったもっと小さな箱。際限なく精妙に連なっていく入れ子細工。
箱はどんどん小さくなっていく・・・そして、またその中心に収められているはずのものも。
それが、まさに私がこれまでの40数年、送ってきた人生の実相ではないのだろうか。」
そんな主人公、
長年勤めた出版関係の仕事を辞めて、福島のとある山間の町営図書館長となった主人公。
コーヒーショップの女性。性的なことは苦手としますが、でも、その姿と心に惹かれる女性と出会います。
「それが明らかになるのをただ辛抱強く待っていた」。
コーヒーショップの女性との出会い、それは辛抱強く待っていたものなのでは・・・。
入れ込み細工の箱も、中に入るものも、16歳の時とはずいぶんと小さくはなっているのでしょうけれど。
たぶんです。
そう思うと、じーーん。
良かったな。本作には救いがあります。
「でも急がないでね。わたしの心と身体はいくらか離れているの。少しだけ違うところにある。
だからあとしばらく待ってほしいの。準備が整うまで。わかる? いろんなことに時間がかかるの」
辛抱強く待っていたものに出会った主人公です。きっと・・・。
人は、何を待っているのか分からないままま、辛抱強くずっとずっと待っているものかもしれない。でも、いつか待っているものに出会えて・・・。
年を取ればとるほど入れ込み細工の箱は小さくなるけれど、待っている中身も小さくはなっていくけれど・・・、
その中身は変わらず貴重なもの。
久しぶりの春樹さん、全661頁、最近には珍しく4日で読み終えました。
騎士団長殺しから6年。次の作品はもっと早く出してほしいです。
老眼もだいぶ進み ^^; 本を読むのもつらくなってきていましたが、
春樹さんの文章は別格です。
ビールを頂きながら、
ビルスマのバッハの無伴奏チェロ組曲を聴きながら ♪
久しぶりに充実した読書時間でした。
「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」とボンジョビ、
「美丘」とレミオロメン、etc etc ・・・の様に。
これからは、無伴奏を聴くときっと、この本のことを思い出すと思います。
" 2023/04/22 The City and Its Uncertain Wall "
Amazon で予約しておいたので発売日に届いて、
すぐに読み始めです。 春樹さんの新作長編小説「街とその不確かな壁」!!
※注 これから読む予定のある方は、ネタバレもあると思うので・・・ ^^; お気を付けください。
16歳で究極の恋愛。
こころが自分と言うもの全体が、求める相手と出会った主人公です(入れ込み細工の箱も、中に入るものもまだまだ大きい)。
文通、少ないデートを重ねますが、手紙もある時に途絶えてしまい・・・。
いつか帰って来るのでは会えるのではと・・・待って、待ち続けて・・・中年の年に。
気が付くと、
少年だった頃、いなくなってしまった少女と一緒に想像した、不確かな壁のある「その街」の本のない図書館の「夢読み」になっています。
その図書館で主人公の世話をするのは、そう、あの少女。
でも、それは、「本当」の彼女であって、じぶんがこちら側の世界で愛した彼女はその「影」。
少女はあの時のまま年も取っておらず、また、主人公のことも知らない。
不確かな壁の街は、「頭に皿をのせている時は、空を見上げない方がいい」街(P76)。
そして、あの心の触れ合いは戻らない・・・。
春樹さんの3作目で、まだ書籍になっていなかった同名の小説。
それを40年経った今、描き切れなかったものを描き切った本作は、
30代に書いたもう一つの双子の様な作品「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」と
並立し補完しあう作品(春樹さんが後書きで述べています)。
たた、ワンダーランドが “とんがった” エンタメ性のある作品であるのに対して、本作はより精神的な、
ある意味スピリチュアル性が強いなぁと感じた作品。
派手さはなくたんたんと、冬の景色がよく似あう作品だなぁと(壁の街も冬と雪です)。
ハードボイルド・ワンダーランドの様に、あちら側とこちら側と、行き来をするような形でお話は進んでいきます。
既に亡くなっているけれど、主人公と一部の人には会いに来る元館長の子易さんと、イエローサブマリンの少年の様なトリックスター的な存在。
春樹さんの作品には欠かすことのできない「穴」。
そして、何よりも春樹さんの文章。
リズムがあって、メタファーも散りばめられて、やはり、読んでいて心地よいです。
久しぶりの心地よい文章、久しぶりの春樹さんワールドにとっぷりと浸かってしまいました。
読んでいる時、それは至福の時。
こちら側からは消えてしまった少女。ずっと待ち続けていた主人公。
このままなのかなぁと・・・心配になりました・・・。
P585
「それにだいたい、わたしはこれまで一体何を待ってきたというのだ?
自分が何かを待っているのか? それを正確に把握できていただろうか?
自分が何を待っているのか、それが明らかになるのをただ辛抱強く待っていた。というだけのことではなかったか? ・・・・・・(略)、
その箱の中に入ったもっと小さな箱。際限なく精妙に連なっていく入れ子細工。
箱はどんどん小さくなっていく・・・そして、またその中心に収められているはずのものも。
それが、まさに私がこれまでの40数年、送ってきた人生の実相ではないのだろうか。」
そんな主人公、
長年勤めた出版関係の仕事を辞めて、福島のとある山間の町営図書館長となった主人公。
コーヒーショップの女性。性的なことは苦手としますが、でも、その姿と心に惹かれる女性と出会います。
「それが明らかになるのをただ辛抱強く待っていた」。
コーヒーショップの女性との出会い、それは辛抱強く待っていたものなのでは・・・。
入れ込み細工の箱も、中に入るものも、16歳の時とはずいぶんと小さくはなっているのでしょうけれど。
たぶんです。
そう思うと、じーーん。
良かったな。本作には救いがあります。
「でも急がないでね。わたしの心と身体はいくらか離れているの。少しだけ違うところにある。
だからあとしばらく待ってほしいの。準備が整うまで。わかる? いろんなことに時間がかかるの」
辛抱強く待っていたものに出会った主人公です。きっと・・・。
人は、何を待っているのか分からないままま、辛抱強くずっとずっと待っているものかもしれない。でも、いつか待っているものに出会えて・・・。
年を取ればとるほど入れ込み細工の箱は小さくなるけれど、待っている中身も小さくはなっていくけれど・・・、
その中身は変わらず貴重なもの。
久しぶりの春樹さん、全661頁、最近には珍しく4日で読み終えました。
騎士団長殺しから6年。次の作品はもっと早く出してほしいです。
老眼もだいぶ進み ^^; 本を読むのもつらくなってきていましたが、
春樹さんの文章は別格です。
ビールを頂きながら、
ビルスマのバッハの無伴奏チェロ組曲を聴きながら ♪
久しぶりに充実した読書時間でした。
「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」とボンジョビ、
「美丘」とレミオロメン、etc etc ・・・の様に。
これからは、無伴奏を聴くときっと、この本のことを思い出すと思います。
" 2023/04/22 The City and Its Uncertain Wall "